６月７日

礼拝メッセージ

「騙しの失望と真実の喜び」　　　使徒言行録１７章２２－２９節

　テレビ大阪で「開運なんでも探偵団」と言う面白い視聴者参加番組がある。家に隠された書画骨董を専門家に鑑定してもらうのである。その趣旨の一つは本物か偽者か、もう一つは鑑定結果の値段である。まず、自分で値段の評価をするのであるが、１０万円ぐらいだと思っていたら、１００万円の評価がつくこともある。本人が１００万円と思っていたのが実際は５千円だったりもする。偽を本物と思い込んでいることもある。その失望と満足の意外性を楽しむわけである。これは現実の値打ちの品定めでありながらゲームを楽しむ感覚である。

　しかし、昨年は「偽」が社会問題化した。うなぎの産地偽装から、肉製品の偽表示、産地偽装など儲けのためなら「何でも騙しのテクニック」を使うと言う問題であった。特に、有毒な食品衛生上の問題は深刻である。大阪では老舗の料亭が残飯を再利用するにいたっては開いた口がふさがらない。騙されたとなると人の心は離れ結末は自滅となる。もっと深刻なのは宗教を装って人を騙す問題である。傍から見て一寸考えればおかしいと思うようなことではあるが、日本の伝統的な宗教心は「祟り(たたり)」や「厄払い」の恐れであり、「罰(ばち)」があたらないように、「災い」にあわないように、おかげがあるようにということである。

そこでは「祈願」であってクリスチャンの祈りのように信仰の告白、感謝、賛美、礼拝といったようなものとは異なる。「何様がおわしますかも知らねども、ただ有り難さに頭うなだる」という言葉は「いわしの頭も信心から」といわれることになる。お札を焙(あぶ)って拝むと幸せになる。足の裏で診断してガンを治療する。井戸水をビンに注いでお払いしたら“神水”になって癒されるとか、一寸考えればおかしいことぐらい分かるはずである。よく考えれば「騙しのテクニック」として宗教を利用している。まったく反社会的であり、犯罪問題が起こっているのが日本の社会的な深層心理の宗教心である。世界最高の文化、経済、科学的な環境にある日本であるが人の「心」はプリミティーブ“原始的な心的状況”であるといえる。

　使徒パウロがギリシャのアテネの衆議所で人々に説教している。「アテネの皆さん、あらゆる点においてあなたがたが信仰のあつい方であることを、わたしは認めます。道を歩きながら、あなたがたが拝むいろいろなものを見ていると、『知られざる神に』と刻まれている祭壇さえ見つけたからです。それで、あなたがたが知らずに拝んでいるもの、それをわたしはお知らせしましょう。世界とその中の万物とを造られた神が、その方です。この神は天地の主ですから、手で造った神殿などにはお住みになりません。」（使17：22－24）ギリシャは哲学の国といわれるぐらいに知的な人々であった。しかし、その反面、ギリシャ神話の風土からは空想と幻想の飛び交う心的風土であった。

人々は「知らない神」という石碑を礼拝しているとのパウロは見て「知らない」神とは「創造主なる神」であり、命と存在の根源である方ですと言っている。すべてのもの存在には始めがある。「世界とその万物を造られたその根源が神である」のである。山や木、滝や、石で作った地蔵、木像は造られたものでることは明らかである。「神である方を、人間の技や考えで造った金、銀、石などの像と同じものと考えてはなりません。」（使17：29）「神は真実な方です」と聖書は繰り返し証している。（コリントⅠ9：10，10：13，ヨハネ手紙Ⅰ1：9等）誕生日に花束の贈り物をもらって「花束さんありがとう」という人はいない。送ってくれた人にお礼を言うのが道理である。山や木、石に生かしてくれて「有難う」と言えるだろうか。

木像、石造を拝むことが不条理であることを聖書は教えている。石や、木の像を偶像、実体のない、意味のない、むなしいことであると言う。「偶像を形づくる者は皆、無力で彼らが慕うものも役に立たない。彼ら自身が証人だ。見ることも、知ることもなく、恥を受ける。無力な神を造り、役に立たない偶像を鋳る者はすべてその仲間と共に恥を受ける。職人も皆、人間にすぎず、皆集まって立ち、恐れ、恥を受ける。」（イザヤ44：9，10）恥とは、人間としてはならないことをする結果である。「偽」を「神」とする偶像礼拝は無知から来る「恥」である。

「あなたはいかなる像も造ってはならない。上は天にあり、下は地にあり、また地の下の水の中にある、いかなるものの形も造ってはならない。」（出エ20：3，4、十戒）

「イスラエルよ、聞け、わたしたちの神である主は、唯一の主である。心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くし、力を尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。」
（マルコ12：29、30）

今週のみ言葉　　テモテⅠ2章5節

「神は唯一であり、神と人との間の仲介者も、人であるキリスト・イエスただおひとりなのです。」

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