８月２日

礼拝メッセージ

「悲しみを喜びに変える希望」　　ヨハネによる福音書11章２８－４４節

　　人生は喜怒哀楽が綾なすようであるとはよく言われることである。人が生まれるときに泣く。そして迎える家族は喜ぶ。そこには不思議なことに涙と喜びが交錯(こうさく)する。生まれる赤子は大きな声で泣く、それを見守る親は喜ぶ。大きな声で泣く赤子の声は生まれる叫びであり、この世に生きる証でもあると言う。泣くときは涙が出る。涙を流すことが「泣く」ことでもある。人は辛(つら)いことや，悲しいことに出会う時に泣くものである。

しかし、嬉しい時にも泣く。結婚式や試合で勝利をおさめたときも感極まって泣くこともある。考えてみれば幸せな子供の結婚の姿を見て育ててきた労苦の思い出が報われた喜びとも言える。人には言えない苦しい練習の日々が、勝利となって報われたうれし涙であるかもしれない。苦しみと喜びは生きる生活の裏と表であるといえないだろうか。涙は、単なる「水液」に過ぎない。その涙は「水」であってもその意味が大切である。

　ヨハネ福音書の11章にはマルタ，マリヤ、とラザロの3人姉弟の話がある。ラザロが病気になり、イエス様に祈って助けてもらおうとして姉たちは人に頼んで迎えにいってもらった。しかし、イエス様は二日たってから出発された。マルタの家に着かれた時にはラザロは死んで4日目になっていた。マルタは、イエス様が居て下さったら弟は死ななかったでしょうと言って嘆いた。

しかし、イエス様は「ラザロは復活する」と言われた。マルタはそれは約束された未来のことであると思っていた。そしてマリヤもマルタと同じ思いでついてきた人々と共に泣き、嘆いた。イエス様はそれを見て憤りを感じて涙を流し、墓の石をのけるようにと言って、墓に入り「ラザロよ出てきなさい」と言われるとラザロは生き返った。

　イエス様は、この出来事の悲しみの中で「もし信じるなら神の栄光を見る」と繰り返し言っておられる。死後の復活や平安というだけでなく、信じるものには今、活ける神が具体的な御業を通して神の約束の真実を証してくださることを「栄光」を表すと言う。栄光は、神が全能にして愛なる神であるという「素晴らしい」メッセージである。イエス様は人々が、死後の世界の甦りの約束だけでなく、その甦りは、今、信仰に目覚め神に生きるときに現実として経験されることを約束している。

この地上の自然や、人の営みは変化する。起こっては消え、消えては起こり、移り変わる。確かなものはない。しかし、イエス様は「信じるなら神の栄光を見る」と言われるとき、神は事実、存在し、悲しみと苦しみの連鎖を超えて、変わらない神の愛と恵みに生かされると約束される。イエス様の「憤り」は、人々が神を真実に信じて、祈ることを忘れている現実への苛立ちであるといえる。「なぜ、神様の真実を疑うのか」という悲しみである。解決の道、幸福の祝福を素直に受け取らない人への悲しみであり、神の愛を信じない哀れさへの涙であると言える。

　ある青年が、親から離れて自立し生活するようになるが、世の誘惑に誘われて遊興に身を崩し、やくざの世界に身を投じる。闇の世界を歩みながら虚しさと恐怖の連鎖の間で、父親の臨終に呼ばれる。懐かしい幼いときからの父親を思い、いつも家族のために祈っていた父の姿を思い出し、必死で家族のために生きてきた父を思うと目前にした死別のとき、「わが子よ帰れ」という神様の声を聴く。彼はわれに返り、闇の世界から神様の光の世界に帰る決心をする。

恐れなく法を無視する闇の世界から、光と希望と愛の神様の世界に立ち返ることができた。この青年は、多くの道を踏み外している青年に希望と愛を説く伝道者になっている。　イエスの言葉を信じるとき失われたものが、回復、復活する。失われた心が、人間性が甦る。復活とは新しい人生の創造である。クリスチャンの人生は喜びと感動の涙の人生である。人は流す涙の意味で生かされる。生きることは希望に支えられることである。

今週のみ言葉　ヨハネ２０章２７節

「あなたの指をここに当てて、わたしの手を見なさい。また、あなたの手を伸ばし、
　わたしのわき腹に入れなさい。信じないものではなく、信じる者になりなさい。」

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