８月２３日

礼拝メッセージ

「人を生かす言葉の真実と力」　　イザヤ６章１－８節

　　人は言葉で交流する。心の絆も言葉で固くされる。言葉は意味が通じ、その真実で効力があることになる。言葉は心に思うことを他の人に伝える。言葉は心の思いを運ぶ器である。人を思いながら言葉を選び、願いを伝えたり、教えたり、ものごとを伝える。そのときに自分の気持ちの中で損得が付きまとうことになる。そうすると言葉の駆け引きを意識したり、無意識にしていることになる。しかし、どのような時にも心の思いが真実でなければ人と人との心はつながらない。嘘と真実が交錯するのが現実の人の心である。日常の生活の中では自分の心を意識している人はいない。誰にも見せない心の中は決して清く、真実なものではない。そのような心と心がぶつかり真実と嘘がぶつかるところに争いと憎しみが果てしなく続くのが現実である。問題の解決は自分の本当の心の姿を知ることが大切であると言える。

　紀元前８世紀ごろにイザヤという預言者がいた。あるとき幻を見る。天にある御座に神の座しておられるのを見た。神殿にセラフィムといわれる天使が飛び交い「聖なる、聖なる、聖なる万軍の主、主の栄光は、地をすべて覆う。」という賛美をしていた。そこで神の臨在を身近に触れる経験をする。その荘厳さと清廉な臨在に出会い。自分の醜さを自覚させられて「災いだ。わたしは滅ぼされる。わたしは汚れた唇の者。汚れた唇の民の中に住む者。…主を仰ぎ見た」と叫んだと記している。神の臨在に触れ、本当の自分の姿、心の現実を自覚した。罪深い自己に滅亡と破滅を予感した。そのとき飛び交うセラフィムが祭壇から火鋏で炭火を取って唇に触れさせた。そのとき「見よ、…あなたの咎は取り除けられ、罪は赦された。」と宣言するのを聞くのである。そのときまた「誰を遣わすべきか。誰が我々に代わって行くだろうか。」という声を聞き、イザヤは「わたしがここにおります。わたしを遣わしてください。」というのである。

　ここで第一に、教えられることはイザヤが神の臨在の前に立ったことによって自己の醜さと罪深さを自覚したことである。自分の姿は鏡でしか見ることが出来ないように神に出会って自分の心の穢れと醜さを自覚出来る。神を信じることは自分に出会うことである。そこで赦されない罪深い心の闇に出会う。解決のない戸惑いと惨めさ、虚しさと破滅的な惨めな自分を知るときに、始めて「私は救われるためにどうしたらいいのでしょうか」という叫びが出てくる。（使徒１６：３０）

第二に、その罪深い穢れをセラフィムが“祭壇の炭火で口に触れた”ことで“罪赦された”と宣言される。火は罪を焼き尽くすことを意味する。自分の行いでなく一方的にセラフィムが神の恵みとして差し出すように罪が解決されることを象徴している「事実、あなたがたは、恵みにより、信仰によって救われました。このことは、自らの力によるのではなく、神の賜物です」といわれている。

第三に、“唇を火で焼き尽くす”という象徴は、“口”と“舌”、“言葉”を表し人間の無意識、現実の実相をまったく焼き尽くし新しい心、新しい人として清めてくださることを示している。「わたしたちは皆、度々過ちを犯すからです。言葉で過ちを犯さないなら、それは自分の全身を制御できる完全な人です。」（ヤコブ３；２）と「言葉」の偽善性、それは人間そのものの罪深さを指摘している。

更に「舌は火です。舌は『不義の世界』です。わたしたちの体の器官の一つで、全身を汚し、移り変わる人生を焼き尽くし、自らも地獄の火によって燃やされます。…舌を制御できる人は一人もいません。舌は、疲れを知らない悪で、死をもたらす毒に満ちています。わたしたちは舌で、父である主を賛美し、また、舌で、神にかたどって造られた人間を呪います。同じ口から賛美と呪いが出て来るのです」（６、８－１０）と言って人間の偽善性、罪性の深刻さを指摘している。この消すことの出来ない罪業の火を神の恵みの火を持って焼き尽くされるのである。

それは正に、「実に、わたしたちの神は、焼き尽くす火です。」（ヘブル１２：２９）であり、「キリストは、聖霊と火であなたたちに洗礼をお授けになる。」と約束している。その約束は「だから、以前のような生き方をして情欲に迷わされ、滅びに向かっている古い人を脱ぎ捨て、心の底から新たにされて、神にかたどって造られた新しい人を身に着け、真理に基づいた正しく清い生活を送るようにしなければなりません。」（エフェソ４：２２）と言う生活の変化に表されることになる。

それはあくまでも聖霊の恵みの働きであり、その聖霊によって生活することが出来るようになるという約束である。そこで神は「あれを遣わそう。私に代わって行くものは誰か」と問われる（イザヤ６：８）。神を信じる私たちが「主よ、神の恵みと愛を伝えるために私を遣わしてください」（８）と言うことができる。恵みと愛に生かされているからこそ言うことができる。感謝。

今週のみ言葉　ヤコブの手紙４章４節

「世の友となることが、神の敵となることだとは知らないのか。
　世の友となりたいと願う人はだれでも、神の敵になるのです。」

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