１１月８日

礼拝メッセージ

「最も大切なこと」　ルカによる福音書１０章３８―４２節

　　生活を平穏に過ごすことは大切なことです。国も家庭も平穏であることが幸せの土台であるといえます。国民が平和に過ごすには国が安全であり、安心、平安であって国民が希望に輝いて生活できることです。しかし、日本は豊かであるといいながら現実では庶民の生活には不安がつきまとい、経済の混乱は生活を脅かします。どんなときにも人にとっては家庭が憩いの場となり、鋭気を養い回復の道を求めることになります。どんなに厳しい戦いのときでも守ってくれる「砦」であり「支え」となる家庭こそは安心と安らぎ、そして気力の回復の場であるのです。高度経済成長期にはファザァーレスホーム（父なき家庭）が大きな問題でありました。今は少子化傾向と高齢化が家族の絆の喪失を招いていると言われています。人と人とを結ぶ心に絆が失われていることになります。

ルカ福音書の１０章にはイエスさまがマルタの家に行かれた時のことが記されている。たいていエルサレムに行かれる時にはエルサレムの南東３キロぐらいのところにあったベタニアという村のマルタの家に寄られたようである。両親はすでにいないようでマルタとマリヤとラザロの姉弟であった。その日もイエスさまがベタニヤにおいでになるということでマルタとマリヤはイエスさまを迎えた。突然イエスさまがおいでになったのであろうか、準備をしていないので姉のマルタはおもてなしのために気ぜわしく用事をしていた。マリヤは、姉の気遣いも気にしないでイエスさまに寄り添ってお話をねだり、イエスさまもマリヤにやさしく話しておられた。姉のマルタはとうとうイエスさまがマリヤに話されるやさしさにいら立ちを覚え、「妹に手伝うように言って下さい。」と語気を強めて言ったのです・その時イエスさまは「マルタ、マルタ、あなたは多くのことに思い悩み、心を乱している。しかし、必要なものはただ一つだけである。マリヤは良い方を選んだ。それを取り上げてはならない。」と言われたという。確かにマルタはイエスさまを愛して、喜んでいただこうとしていた。しかし、イエスさまに喜んでいただこうとするマルタの行為よりも、イエスさまの喜びは「ご自分の言葉」、すなわち「神様の言葉」をなによりも大切にすることであった。口語訳では「無くてならぬものは多くはない。いや、一つだけである。マリヤはその良い方を選んだのだ。そしてそれは、彼女から取り去ってはならないものである」。人にとって、家庭にとって「なくてならないもの」「たった一つの大切なもの」とは「神の言葉を聞く」ことにあると言っています。

紀元７０年、エルサレムがローマの軍勢に包囲されて陥落する寸前にラビ、ベン・ザカイは唯一、城門外に脱出できる葬儀を装い、棺の中に潜んで脱出し、密かに司令官ウパニシャウスと面会し「かれが次期ローマ王になる」と予言しました。司令官はザカイに願いを一つ聴いてやると言ったときに、ザカイは「律法を学ぶ小さな家をください」と言ったといわれています。やがてエルサレムは陥落し、ユダヤ人は離散する。しかし、地中海の海辺のヤムニヤの村で旧約聖書が成立するきっかけとなっている。イスラエルはエルサレムを失い、礼拝する神殿は破棄され、国民は離散する。しかし、いかなるところでも、いかなるときにも、「神の言葉」に支えられ、神の約束として再び、約束の地に呼び戻すという希望に支えられ、苦難と試練を越えて主を待ち望んできた。その後、１９４８年、エルサレムは奇跡的に回復しイスラエルは再起した。失われた母国語ヘブル語がよみがえった。神の言葉、神の約束は変わることがない証であるのです。「天地は滅びるが、わたしの言葉は決して滅びない。」（マタイ２４：３５）

家庭が真実の神の言葉に支えられる時こそそこには希望があります。家の柱、土台をキリストの言葉として家を建てるときに真実の幸せが約束されます。米国第１６代大統領になったアブラハム・リンカーンは貧しい開拓農民の子として生まれました。幼少のとき母親に死に別れた。父は無教養の人であったが、次の母は敬虔深い信仰の人でありました。イブはこの母から神の愛に生きる目標を与えられ、聖書を教科書として教育を受けたのです。家族は極貧であったがいつも温かい家族の愛で結ばれていました。ある時、馬鈴薯が三つしかなかった。母はイブと姉に一づつ渡し、一つを半分にして母と父が分けた。イブは両親の愛と優しさを学び、やがて独学で弁護士となり、大統領となったときにもこの母の愛が人類愛として黒人奴隷解放の父、民主主義の父と言われる歴史的な人となったのです。神の言葉は人を支え、如何なる時にも希望の力となるのです。神の言葉に生きる人になろうではありませんか。

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