１２月２０日

礼拝メッセージ

「クリスマスの喜びと希望」　　.マタイによる福音書１章１８－２４節

　日本の社会ではクリスマスは年末の風物詩となり、どこでもだれでも喜びを祝うようになった。大抵の家庭ではクリスマスケーキを買って家族団らんの時をもつ。町内には高価で綺麗なネーションを飾る家が何軒も目立つ。地域の「小学校便り」にはクリスマスの行事が載せてある。近年、公教育の場での宗教行事もうるさい時代であるがクリスマスは別のようである。確かにクリスマスは宗教や思想を越えた人の心をつなぐ絆があるということを理解しているように見える。どんな国でも、どのような時代にも変わることがなく人類が求めている共通した願いがそこにはあるということではないだろうか。

　一方、日本の文化とさえいわれる無節操、無思慮に何でも受け入れる風土の現象とみるきらいもある。日本の国が原始の時代から文明的な生活になったのは大きく２つの時代があった。それは中国の文明によって文字や生活の仕組みを受け入れたことであり、近代の文明は西洋から受け入れてきた。日本古来の伝統は、美しい自然と共生する平和の心を求める風土であると言える。美しい自然は人を生かし育てるいのちとしてそこに神を感じ、自然を礼拝し、人格化して八百万の神とした。いつの間にか人の功績をも神格化して神社が生まれる。山も、川も、滝も、大木も礼拝の対象となる。そこに神国日本の思いが流れることになる。やがて仏教が渡来するが、その教えの中心が自然の神々との表れとして神仏がごちゃ混ぜになる。そこで人が生活する営みは政治であり、政治は権力闘争となり、人が神仏を利用することになる。権力の闘争は武力の闘争となり、そこには対立と憎しみが纏いつく。どのような国でも人の営みは同じような道を歩むことになる。

　しかし、宗教は人の心の力であり、命である。そこには譲りえない理想と真実がある。動物と人の違いは何か。明らかな違いは、人は宗教心をもち、動物には宗教心はない。神様のごとくに生きることこそ人の理想である。人は神を求めて神を作り、神を利用しようとする。そこには真実の神はない。信長は利権化した仏教を破壊した。徳川幕府はキリスト教を弾圧するために仏教を利用した。明治政府は仏教を捨てて、天皇を神格化して国家神道を権力の道具にした。近代化の中で破壊と殺りく、統制と人権無視の悲劇を生んだ。仏教も、神道も、儒教も宗教として誇るべき思想であり文化である。しかし、国と時代を超えて人間共通の真実の幸せを、歴史をみる限りもたらしえていない。

人に基本的な幸せの土台は、すべての人が人として尊ばれることである。それは一人の人の人権、すなわち自由であるということに尽きる。その自由が生きる大切ないのちであり、力である。人は自由に希望と願いに生き、共に生きるためには「愛」をもって共生するときに平和が保障される。そこに真実な平和があることになる。どのような宗教も安心立命を求めるものである限り尊い人の営みである。しかし、そこには人間を真実に生かす自立と自由があり、人が人間として共に生きる「真実な愛」が裏打ちされなければ人を解放する、即ち、救うことになはならない。

　クリスマスは神が人になられた出来事を告げるときである。「初めに言葉があった。言葉は神と共にあった。言葉は神であった。…言は肉となって、わたしたちの間に宿られた。わたしたちはその栄光を見た。それは父の独り子としての栄光であって、恵みと真理とに満ちていた。」（ヨハネ１：１，１４）「言葉」は理性であり、聖書の意味するところは知恵である。それは人間の理解を超えた知識と知恵である。（イザヤ１１：２）その知恵こそは「神の愛」である。人が出会うことのできない人を超えた神の知恵と愛が、人として現にされた。それがイエス・キリストである。誰も思いもつかなかった道、解決の道、救いの道を示された。「神は愛」であることをイエスは全生涯を通して現わされた。神の愛は愛する者ためにすべてを犠牲にする、いのちさえも、その愛する独り子さえも与える愛であることを示された。そこに人のゆるぎない、永遠の平和の道が、家庭の幸福が、人を生かすいのちの道として示された。闇夜に輝く光の希望として、無限の喜びの訪れとして示された。キリストの降誕、クリスマスである。クリスマスの訪れは単なる宗教でもなく、哲学や、道徳でもなく、すべての人を生かし、希望といのち、不変の平和の訪れなのである。「わたしたちが互いに愛し合うならば、神はわたしたちの内にとどまってくださり、神の愛がわたしたちの内で全うされているのです。」（ヨハネⅠ４：１２）神の平和が、神の善意が、人の世に全うされる。これがクリスマスのメッセージであり、約束である。

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