| ７月１８日 | 礼拝メッセージ |
| 「知られざる豊かさの発見」 ルカによる福音書19章Ⅰ－10節 |
| 自分の所有でありながら、それを知らない宝があるとすれば愚かなことです。聖書に「 あなたの富のあるところに、あなたの心もあるのだ。」（マタイ６：２１）と記しています。富があるのに気付かなければ富（宝）はないのと同じであると言えます。花の種がよい土と水や肥料に恵まれれば持っている命が育ち、美しい花を咲かせることになります。人生のいろいろな経験の中での試練や出会いで自分思っている「能力」や「才能」という宝に気付かなくなっていることがあるのです。 志賀直哉の短編小説に「瓢箪と清兵衛」という作品があります。清兵衛は小学校5年ぐらいの少年で根っからの瓢箪好きで、瓢箪を小遣いで買って来ては磨き、家中に飾っていたのです。とうとう学校にまで持って行って磨いていました。あるとき清兵衛は町で１０銭で形のいい瓢箪を買いました。学校へ持って行って修身の授業中に机の下で磨いていたので、先生は烈火のごとく怒り、瓢箪を取り上げ、家に行って大工である清兵衛の父に厳しくしつけるように言いました。親父は片っ端から家中の瓢箪を壊して二度と清兵衛に瓢箪をいじるなと禁じました。先生は清兵衛から取り上げた瓢箪を小使さんにくれてやりました。小使さんは骨董屋に持って行って売ろうとすると、５円になると言うのです。そこで駆け引きして５０円になったのです。これは当時の５カ月分の小使さんの給料であったのです。その骨董屋はしばらくして、隣の町の富豪にその瓢箪を何と６００円で売ったと言うのです。清兵衛は瓢箪作りを止めて絵を描くようになる。というところで話は終わります。 この話は貴重な教訓を与えています。子供の持っている能力をもぎ取り、それを引き延ばすのでなく、殺してしまっているのです。 ルカによる福音書１９章にはエリコの町のザアカイの物語が記されています。イエス様の時代、イスラエルはローマの植民地でした。当時の徴税はその町から植民地政府が税額をおおむね決めて、地元のユダヤ人に請け負わせて徴税しました。取税人は徴税分に経費と取り分を、相手を見て徴税するのでした。その裁量、さじ加減で利益を生み出し、取税人は裕福で豪勢な生活をしていたのです。当然、人々は面従腹背、顔ではにこやかに、内面では軽蔑と反感で憎んでいました。取税人はユダヤ人でありながら、律法の精神である「隣人愛」（レビ１９：１８）から関係のない利己主義的で強欲な人間として見られていました。人々は、彼らをまともな人間でなく、罪人であり、いやしい、滅びの輩と見下げてもいました。ザアカイはその取税人の頭であり、裕福な生活でありながら孤独であり、いつも罪悪感を感じながらそれを無視していて心には平安のない人間であったのです。イエス様という方が新しい神の国を語り、神の愛による救いを伝えておられる噂を聞いていたと思われます。イエス様がエリコに来られるということを聞き、背が低いので群衆の群がる中では到底見ることは出来ないので先回りをしてイチジク桑の木の上に登って待っていた。そこへイエス様が通りかかり、木を見上げてザアカイに「降りてきなさい、今日はあなたの家に泊まる。」と言われた。人々は、「どうしてあの罪人の家にイエスは泊られるのあろう。」と言ったのです。イエス様を家に迎え入れたザアカイはイエス様の話を聞くうちに、心に自分の心の罪深さを示され、財産の半分を貧しい人々のために与え、人々から騙して取り立てていたら４倍の返済をします。」と言ったのです。イエス様は「この家に救いが来た」と言われたのでした。ザアカイは罪を悔い改め慈悲の心を取り戻し、神の御心に歩む決心をしたのです。拝金から神を第一とする人に変えられたのです。ここで教えていることは神は、どのような人にも神が与えておられる「愛し合う」神の心を取り戻せることを示しておられるのです。神を愛するとき人にも愛される人に変わると言うことです。人は、もっている宝としての「愛する心」を神様に出会って真実に自覚するときに、得難い「豊かさ」を得ることが出来る。その神の愛が生み出す幸せを、広げ、いや増すことになるのです。 第一に、ザアカイは孤独から解放されました。人々と共に生きる喜びを、友を得たのです。「人生で最高の幸せは、よき師に出会うことである」とイスラエルでは言い伝えがあるのです。第二に、よき師、イエス様の言葉に生きる幸せです。人が真実の愛と善の基礎を持つことはゆるぎない確信と希望を持つことになります。神の言葉に生かされる喜びです。第三に、イエス様の言葉に生きることによる幸せの日々は、感謝と微笑みが実り、賛美と喜びの実が結ばれます。生活の中で礼拝する日々が生まれると言えます。ザアカイは孤独から交わりへ、空疎な日々から充実の日々に、不安と不平から感謝と賛美の日々に変えられたのです。与えられている神様からの豊かな実を結ぶ信仰の宝を生かそうではありませんか。 |
今週のみ言葉 ルカ１９章１０節 |