「聖書的説教とは」
 
アドバンストスクール公開講座〈説教の前提U〉
聖書解釈と文献批評の今日的課題
発題 廣瀬利男


3.歴史的文献批評学の学的性質 歴史における相対性と絶対性



3.歴史的文献批評学の学的性質  歴史における相対性と絶対性
文献批評学は歴史実証的な方法で聖書を研究することである。いみじくも、中世の聖書の霊的解釈、伝承への反動として、神の言葉の正しい真意を聞くというルターの“聖書のみ”の原理が歴史的文法的解釈へ志向付けられ、言語学的な文法と歴史事実としての神の言葉の解釈が“文献批評学”の先鞭ともなっている要素を見逃しにできない。
歴史的文献批評学の基本的思想は、歴史の実証にある。歴史における、時の一点は時の流れの前後の関係を観察することになる。時の流れは連綿と果てしなく続く。相対的関係にある。信仰は超越的、絶対的な性質のものである。(時と存在の関係)文献としての聖書の研究はこのような歴史の現実で研究される。聖句の言語の意味は何か。生活の座(Sitz im Leben)での理解。社会文化の背景などの要素を分析して資料の原意を果たして再現できるのだろうか。聖書解釈は歴史解釈になり聖句のコンテキストをたどるとき史的事実を確定することは至難のわざとなる。史的確定は解釈者の解釈による。そうすれば解釈するものの今の価値観や社会思想に拘束さえているのであるから完全な意味で解釈することはあくまで蓋然性の域を出ない。歴史文献学での聖書解釈はまさに“猿の玉葱をむく”の譬えに擬(なぞら)えることができる。猿は玉葱をもらって喜んでいる。器用に皮をむき続けて最後は何も残らない。残るのは何もないことである。超越的な信仰のこと、啓示や正典性は見失われて聖書の統一性は分解されることになる。




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発題内容1/12


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